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LoveletterはLive Letter -aiko「Loveletter」とaiko考察-



■はじめに
 二〇一三年、aikoのデビュー十五周年の年に発表されたaiko曲と言うのは意外と少ない。と言うか、二曲だけである。彼女初の配信先行となった「4月の雨」、そして記念すべき十五周年記念日に発売となった「Loveletter」である。
 カップリングも含めれば二〇一三年発表の曲は四曲のみ(CM曲としてオンエアされライブ先行で歌唱された「君の隣」を含めれば五曲)で、では彼女は記念すべきその年に新譜を出す代わりに何を行っていたかと言うと、ここに来られる諸兄方には言うまでもないことであろうがライブである。Love Like Pop Vol.16とLove Like Rock Vol.6とLove Like Pop Vol.16.5、そしてファンクラブ限定超お宝ライブであるLove Like Rock 0という四種類の異なるツアーをおよそ三ヶ月、延期分も含めれば五ヶ月に渡って行っていたと言うのであるから、いやはやライブアーティストaikoここにありと言わざるを得ない一年であった。
 今回取り上げる「Loveletter」は、このライブ中ではなくその前年のLLP15の最中に生まれた一曲で、ライブ向けのアップナンバーとなっている。助走となるイントロから激しくかき鳴らされるギター、風の如く駆け抜けるストリングス、そしてaikoの伸びやかで力強い歌声、それらすべてが全身を熱くさせる。盛り上がらないわけがない。ライブの申し子と呼んでしかるべき一曲と私は思う。
 別冊カドカワaiko特集号の「泡のような愛だった」ライナーノーツからも裏は取れる。「そもそも曲が出来たのもライブ中やったんです。LLP15をやっている最中に、一気にわーっと書いたのを覚えてますね」(ライブ名略筆者)「歌に関しては、レコーディングの時からライブで歌うことをイメージしていた」と話し、「そのタイミングでは一番新しい曲だったにもかかわらず、みんながすごく盛り上がってくれて。それがうれしかったですね」と話す。こちらも顔がほころぶと言うものだ。今後もライブ主力曲としてますます磨かれていくのだろう。

■鮮やかな時間経過
 音楽のことはさておいて歌詞である。この曲を聴いたのは発売一ヶ月前ほどのことだったと記憶しているが、最初に思ったのは「いつのまにか読む側の物語から、こっちが(ラブレターを)読まされる物語になってて面白いナー」と言うことだった(単純)
 簡単に言えば逆転の物語である。しかし改めて歌詞を読んでみると、驚く程綺麗に時間経過が描かれている一編なのだとわかる。
 まず一番。「書き出しは唐突で二枚目から読んでしまったのか」と思うような、「話しかけてくれる様」な、とてもラフに書かれた手紙を受け取り、読んでいることが描かれる。「何度も何度も」と印象的なサビにあるように、嬉しくて何度もそれを読み返す「あたし」が大変愛しい。「苦しい」とあるが、これは苦しいほど嬉しいと言う一種の極みを表していよう。
 そして二番。今度はそれに対し、返事を書く段階に移る。のだが、「文字を間違わぬよう 丁寧に書こうと\思うと忘れそう 冷たい指先\大切にちゃんと言いたいのにうまく出てこない」からも伺える通り、その作業に四苦八苦しているあたしの姿が描かれ、まるでそれから逃避するように、やっぱり相手の手紙を「何度も何度も」読み返し、ますます深みにはまっていく姿が描かれる。誰しも経験があるような一連で、特に手紙と言う状況でなくとも、文章を書く仕事や趣味を持つ人は尚更のことであると思うここに、リスナーはそうなんだよねぇ! と膝を打ちたくなるところである。私だ(しらんがな)
 そして大サビは、そんなあたしが書いた返事の内容であろう文章と、結びの一句で曲が閉じられる。いや、返事の内容と言うよりは、あたしから届けるメッセージ全てにおいて言えるある想いが綴られている。このことについては後で述べようと思う。
 以上読んできたように、Loveletterの一番、二番、大サビは、途中に回想や過去の描写を含まず、一方向に流れる時間経過が綺麗に観察出来る、なかなかに優れた歌詞であると思う。

■aiko曲における手紙
 ところで、ラブレターと言う単語で思い出すのはご存知四枚目のアルバム「暁のラブレター」である。このアルバム収録の「風招き」に登場するフレーズが現時点でaiko曲唯一の「ラブレター」であると思うが、「封を閉じれないラブレターの様\言えないまま溢れていく言葉は闇に埋もれ」とあるように、実物ではなく比喩としての登場である。
 aikoの曲と言うと、「おやすみなさい」に代表されるように、手紙よりむしろ電話のモチーフが度々登場する。この電話モチーフ曲考察も常日頃どころか昔からやりたいと思っている研究テーマなのだが今回は割愛するとして、では、aikoの曲に登場する手紙はどんなものがあるのだろう。「あっとあいこ。」さんの歌詞検索を活用し、手紙の登場する曲を調べてみた。
 まず、検索を掛ける前に私も真っ先に思い出した「アスパラ」では「あなたに宛てた手紙 いつも渡せないまま」と登場する。好きな男子である「あなた」には、既に他に好きな人がいる。成就できない想いを抱えた思春期の少女の切なさが「渡せない手紙」と言うモチーフに濃く表れている。直前の「折れた鉛筆」も既に悲恋の趣を強めていて尚更切ない。
 発表順に見ていくべきだが、五十音順に見ていく。次は「キスが巡る」であるが、「ずっと夢の中だったのか テーブルに置いてあった手紙\いつの間に書いたのだろう」とあり、これは相手からの置き手紙と言う設定が読み取れる。夢の中にいるのかと思わせる程に相手にどっぷり恋をしている「あたし」へ宛てられた手紙、と来ればきっとLoveletterのあたしのように何度も何度も読み返してますます相手の世界にどっぷり浸かっていくのだろう。ええいその幸せをよこせ、と言いたいくらいに恋愛の有頂天にいる感じがして、非常にポジティブな曲である。
 続いて「なんて一日」の二番では、知らず傷つけた相手へと向けた手紙として登場する。「あたしが書いた上手くない手紙の文字の隙間にもあなたはいるのさ」とあり、常に相手(僕)があたしの中にいると言うことを表していて、ちょっと必死さも伝わってきてなんとなしに「あたし」が愛しい。
 そして続いて「蝶の羽飾り」であるが「細かく刻まれた愛し方や 渡せずホコリをかぶった手紙も」と言うフレーズを歌詞カードで確かめた時に「また渡せてない!」と素直に思ったことをここに記しておく。別れた相手を考えないようにしようとしても想い続けて苦しんでしまう失恋の一曲だが、失恋だから当然と言うべきなのか、「アスパラ」のように「渡せない」ケースで登場している。
 以上見てきたaiko曲における手紙をおおざっぱに二分すると、自分からの手紙と相手からの手紙になるが、自分からの手紙は「蝶の羽飾り」「アスパラ」比喩としての表現で「風招き」、大体「渡せてない」(AAを使いたい気持ちを察していただければ幸い)ものになっているのが興味深い。
 読まれて初めて意味を持つのに、何と言うことだ。渡せなかった、完成しなかった手紙は、読み手・聴き手にどう思われるか。やはり「切なさ」「虚しさ」が生じるものだろう。報われない想いは化石となって生き続ける。あるいは死に続ける。
 では満を持して登場した「Loveletter」はどうか。これは相手からの手紙と自分からの手紙、両方の属性を持つが、ここでようやく初めて相手へと渡されている――少なくともそのように読めるのである。いや、まあ、歌詞には渡せたとは書いてない、と突っ込まれればそれまでなのだけど。ともかく手紙は一応完成していると見ると、これまで失敗に終わり、無惨に散っていった想い達はようやく報われる、昇華されるのである。やったね! とハイタッチしたくなると言うものだ。

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