■あたしのあたしが知っている
 大サビは一番サビの繰り返しである。「予告/あたしだけの道をあたしは知っている/変幻自在振り返れば綺麗」──あたしはあたしだけの道を知っていて、渡って行ける。Cメロで流した涙も含めて、その道を「振り返れば綺麗」と歌う。誰のものとも被らない、あたしだけの道だ。どんな近道よりも、信じている、でこぼこの自分の道を辿る方が、何よりも楽しく美しいだろう。
「選べないよ ずっと だけどそれでいい/きっとあたしのあたしが知っている」でこの曲は閉じられる。あたしのあたし。一体誰なのだろう。リスナーによって千差万別の答えが出るだろうが、やはり未来のあたし……と言うよりは、あたしの中の見えないあたし、なのだろうか。個人的にはそう思う。
 心のもっともっと奥底にいるものだ。かといって怖くてどろどろして、醜いものというわけではない。むしろほんのりと光っているものだ。自分で選んだものを肯定してくれる、他人ではない自分自身だ。自分を不安にさせてくる自分と同じくらい確かに存在する、自分を安心させる自分自身である。自分の背中を押してくれる自分だ。
 人はいろんなものに勇気や原動力を貰って生きていく。けれど最後に走り出すのを決めるのは、背中を押して走り出していくのは、つまるところ自分自身である。「あたしのあたし」とは、その最後のきっかけになる自分自身なのではないだろうか。あたしのあたしも未来が明確に見えているわけではないが、でも、不思議と大丈夫であることを知っている。むしろ知っているから、背中を押せるのだろうな……そう思ったところで、歌詞読みを終了しよう。


■おわりに
 ざっと読んでみたが、肯定文や命令形、断定が多い歌詞であった。(いわゆる「ますらをぶり」であろうか)インタビューで言っていた通り、それだけ自分を押し上げる為に作った曲なのだろうなと感じる。aikoのアピールポイントである「恋愛」を極力排除した、もっともっと根本的な、生きることに根差している曲だなと改めて思ったのであるが、だからこそすごく、万人に受け入れられやすい曲になったのだろう。これをシングルで敢えて発表したのも、aikoは恋愛ソングだけではないぞということを世に表したところがあったように思う。
 勿論、「とぅっとぅる・とぅっとぅる」のメロディーがキャッチーであって、何より曲自体が楽しくて前向きなのが本当に良い。ポジティブなことに心底救われるのだ。LLP20と21でも歌われたし(LLP20は収録アルバムを引っ提げたツアーだから当然ではあるが)今後のライブでも欠かせない曲になって欲しいと祈るばかりである。歌う度に私達と、勿論aikoの背中も押してくれるだろうから。
 この曲を聴く皆の「次のおはなし」が「愉快な話」になればいいと思う。勿論aikoも同様だ。どんどん「愉快な話」を私達に話して欲しい、表して欲しい。また一つ歳を重ねるaikoのこれまでとこれからの道が、いつまでもいつまでも変幻自在で綺麗な道であることを願いながら、筆を置くことにしよう。

(了)



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