■怖さに肉薄する強さ
 そんな強い想いをもっているあたしだが、二番のサビではそれまでとは違い、少し何らかの背景を匂わせる描写が現れる。
「時に逆らい離れたあの日の様に/二人に吹く風が違う道誘っても」である。あなたとあたしは過去に一度道を違えたことがあるらしい。続く「必ずあなたの声だけは聞こえるの/どんな明日が待っていようとも」によると、それでもあたしは変わらずあなたのことを想い続けていたことが伺えるが、あれだけ強い想いを有しているのだ、当然と思わなくもない。「必ずあなたの声だけは聞こえるの」はオリコンで話していたような「心の中で通じ合っている感覚」の表れだろうか。そんなあなたの声を必ず感じ取るあたしが歌う「どんな明日が待っていようとも」には、たとえ道を違えても、どんな明日になろうとも、未来には、この進む先には必ずあなたが待っている、必ずあなたの元へ辿り着く、と信じて疑わない強さがあるように思う。あなたへの想い一つあれば何だって大丈夫だし、独りになっても道を進めるのだ。
 しかしその「必ずあなたの声だけは聞こえる」と断定してしまえる強さは聴く人によってはaiko自身も評するように「重い」し、雑誌3で話していたのだが「平成で言うストーカーみたいなイメージ」を抱いてしまうかも知れない。別れても、すれ違っても想い続けていたと言うことは確かに稀有なことではある。けれど「絶対にあなたと共にいる」と強く信じるその気持ちを「絶対にあなたは私から離れられない」と言う風に表現を変えてみると少し怖さが滲み出るような気がする。が、それも全てあくまで想いの強さの裏返しであって、私がそう読んでみただけの話である。安珍清姫伝説を気取るわけではないが、強すぎる想いは時として恐怖に繋がりかねない、と思ったのだ。PSでaikoは「“恋という魔物”が曲のテーマなので、少しドキっとする部分のあるラブソングになった」と語っており、そういう側面もあるのかも、と。
 話を戻す。違う道にあってもあなたの声が必ず聞こえると言うことを踏まえると「あたしの終わり」と言い切ってしまえるのもなんとなくわかるような気がする。「ロージー」の「きっとどう転んだって きっとどうあがいたって/あなたとあたしは恋人なのよ」ではないが、道が分かれたとしても、あたしは結局あなたの元に帰りつくしかないのだ。どんな曲がりくねった道であっても、あなたの存在自体が完結の暗喩となる。終末、終幕だけでなくあの「終わり」にはそういう意味もあるような気がする。

■永遠に繋がる完結世界
 大サビは一番のサビのリフレインである。ではあるが「あなたに出逢えた事があたしの終わり」は落ちサビで存在がより一層浮き彫りになり、改めてこの曲に籠められた冷静なる情熱が物凄いことを思わせる。そして一番サビの段落でも既に指摘したことだが、一番と同様、この曲も「永遠に」で閉じられる。「ずっと」から始まり「永遠に」で終わるのは気付いた時少しぞくぞくしたものである。考えてみれば「ずっとそばにいる」なんて、永遠を約束するなんてとてつもない愛の表現であり、告白そのものである。ずっとと永遠にが手を取り合ってループしている、濃く重くそして強い愛の世界、完結しきったその世界に気が付けばリスナーである私達はすっかり取り込まれているのだ。「まさに、究極の純愛ソングです!」(雑誌3より)とaikoが自負しただけある。

■重い愛の代表作に
 アルバム曲としてひっそり存在し、ファンが語り継いでもいい知る人ぞ知る秘宝にしておいてもそれはそれでアリだが、シングル曲として出たのが個人的には嬉しく思う。aikoと言う歌手、いや作家にある愛の持つエネルギーを堂々と発表出来たのだから。勿論「ずっと」以外にもaikoには深い愛の曲、重い愛の曲が山のようにある。だがとてつもなく強く濃厚な愛の代表作としてこの「ずっと」を、シングル曲と言う手の取りやすさ(?)もあって私は是非推薦したいところである。

(了)

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