■夏が舞台、あるいは登場する曲
 ではその夏曲を一曲ずつ見ていこうと思う。夏が舞台の曲もあれば、四季の描写、もしくは比喩表現などで夏を使用している曲、かつての思い出の場面として夏に言及している曲なども挙げていく。

・夏にマフラー
「夏、日射しの雨 きれいだ」
aikobonのライナーノーツによると「夏にマフラーするくらい暑い。それくらい熱いラブラブな二人」とのことなので、季節よりは比喩表現の方に近いのかも知れない。ともあれ夏とタイトルにあるのはこれと「夏が帰る」「夏バテ」「夏服」くらいなので、一応は夏曲。


・花火
「夏の星座にぶら下がって 上から花火を見下ろして」
元ネタとなっている花火は淀川花火大会のこと。また、夏の星座はaikoの誕生星座であり夏の代表星座でもある蠍座。
「少しつめたい風が足もとを通る頃は」と言うフレーズが二番に登場するが、それを考えると秋の手前くらいの季節でもあるらしい。

・カブトムシ
二番の四季の描写の一つに「リンと立つのは空の青い夏」がある。

・二人の形
「あったかい夏の始まりそうな この木の下で結ぼう」
なお夏にマフラーと同じく「雨」も二番で登場したりする。


・アスパラ
「思わず目を閉じた夏の日」
全編に渡って夏である。aikoの中高生時代を背景にした曲だがaikobonにて「(教室に冷房がついていて、教室を)一歩出ると死ぬほど暑い」と夏の学校のことを話し、「自分もやっぱね、思い出すんですよね、鮮明に学生時代を」と言っていることから、夏の暑さと中高生時代が強く結びついているのではと思わせる。

・September
「夏の光の下で見つけた 少し知ってた でも黙ってた
 小さな終わりを」
夏を冠したアルバム「夏服」の一曲。九月という題でもあるので夏の終わり付近を思わせる。aikoはaikobonにて「いつも元気だなんて決して思ったりしないでね」のフレーズに言及し「このフレーズが出たことで(アルバムに入っていることで)夏服は完成した」と話す。

・夏服
「思った以上に静かに こんなに早く夏が来る」
「冬の切なさ引きずったまま  あたしはそっちに行けない」
夏の始まりの曲だが非常に大人しく、言ってみれば暗めの曲である。「冬服から夏服に着替える」ということはaikoにすると「切ない」とかを「すごい出しやすい」現象であり、「冬服」「夏服」と言った名称もaikoの中ではすごく切ない言葉とされている(aikobon参照)


・あなたの唄
「この夏は崩れるかそれとも愛を生むか」
「蝉と一緒に残り少ない今に叫んで」
発売時期も夏真っ盛り(八月十四日)で歌詞も明確に夏。aikobonにて「夏の儚さと恋の切なさが重なった曲みたいなのを歌いたくて作りました」「でも前向き!みたいな」と明かしている。曲調も明るいので、aikoの言葉も踏まえて考えると今回読解する「雲は白リンゴは赤」の前身のような曲でもある。

・マント
「あの夏の日着てたTシャツは もうたるんで着れないけれど」
「夏草に委ねて あたし今を生きる」
明確に夏とは断定しきれないものの、夏草の存在は曲の季節を夏かと思わせる季語のように思える。「あの夏の日」としてかつての夏を思い出している点に、aikoにとっての夏とは何かを少し考えさせられる。


・帽子と水着と水平線
「背中の水着の跡 もう一度焼き直そうか」
夏に限らずとも海水浴は出来なくないと思い最初は省いていたのだが、やはり夏の季語に富む曲なので夏曲にカウントする。フレーズに「夏」は用いられず「海」も登場しないものの、浜辺で出逢った二人の恋の始まりや高まりを感じる、aikoには珍しく(?)ポジティブとハピネスに溢れた一曲。ライブでも比較的演奏されやすい。ちなみに曲の成立背景としては女子三人で海に出かけたことで出来たとaikobonにて明かされている。

・最後の夏休み
「あの子が言ってしまったの もうすぐ来る最後の夏休み」
タイトルに夏休みとある通り全編夏である。夏休みの始まる直前を舞台にしている。しかし何かが始まる前と言うより、どちらかというと「事態が停滞する」の雰囲気が強いのは気のせいだろうか。


・恋の涙
「街を埋め尽くす桜の花に夏を待つあたし」
夏が舞台となるわけではないため、アルバムタームごとの夏曲カウントではカウントしなかった一曲。「歌詞はフラレ系ですけど、まだ希望を捨ててはいない女の子の曲」とaikobonにて話しているので、「あたし」は「夏」に希望を抱いている様子と見える。

・ビードロの夜
「打ち上げ花火の影」
曲の舞台が夏というよりは夏の一場面を示すものとして挙げられている。電話曲研究でもこの曲を挙げたが、電話では伝わらないものとして「ビードロ色の涙」と共にこれを連ねるのは非常に巧み。


・キラキラ
「触れてしまったら心臓止まるかもと本気で考えた暑い夏の日」
めちゃくちゃ夏。発売日も夏(八月三日)歌詞も夏だし夏曲じゃーんと思わせておいて、実際のところ季節は夏に限らないのかも? と思う。と言うのも二番のこのフレーズはあくまで回想しているフレーズなので。判断はリスナーに依るところが大きいが多分九割のaikoファンが夏曲とするだろうし私もそう。めっちゃ夏。

・ある日のひまわり
「ねぇ あのひまわり畑も下を向いてる 季節がゆくよ」
「夏に出たことを思い出すきっかけにしてほしい」と「彼女」に収録される程度には夏。歌詞を考えると晩夏の頃だろう。

・雲は白リンゴは赤
「夏は何度もやってくる」
とても夏。曲調もホーン隊の音が明るいアップテンポだが歌詞自体は暗めというか、失恋した女子が主人公。リンゴの赤は夏祭りのりんご飴、水風船はいわゆるヨーヨー釣りのヨーヨー。ちなみに歌詞中に雲は出てこないが夏と関連させるとなると入道雲だろう。

・シーソーの海
「あなたの鼻先に留まる真夏の汗に恋をする」
夏関係ないと思ったら夏でした。雲リンが真昼の夏ならばシーソーの海は真夜中の夏といった雰囲気。

・シャッター
「夏が終わってしまう合図が涼しい風と共に全部連れていった」
「彼女」が晩夏のアルバムと思ってしまうのはこのシャッターの「夏が終わってしまう合図」が一曲目にあるため。なお「黄色の道」はaiko曰く銀杏並木ということなので、一気に秋の曲にブレてしまったりもする。


・星のない世界
「夏が来る手前の 冷めた風が首をさらった」
思い出の中の夏というところでカウントせず。曲自体に季節は設定されていないように読める。しかしながら発売時期は夏(といっても晩夏が近い八月二十二日)

・ハルとアキ
「夏の日射しの中も」
四季の描写として用いられている程度なので星な世と同じくカウントはしていない。aikoの中では夏と「日射し」の結びつきは強い?


・KissHug
「夏髪が頬を切る」
aiko語・夏髪。夏とついているし発売も夏なので夏曲。他に「暑い帰り道」といったフレーズもある。

・線香花火
「あなたの指を追いかけた最後の夏さようなら」
これも思い出や回想の中の夏とも読めるのだがタイトルが夏の季語であるので夏曲としてカウント。失恋みのある一曲で味わい深い。

・夏が帰る
「いつだって君に逢いたいよ 静かに雨と夏が帰っても」
もはや常識であるくらいに知れ渡っているがアロハ3を受けて出来た曲であるので思い切り夏曲。夏の終わりと楽しい時間の終わりを惜しむ一曲。

・リズム
「あたしをゆっくり変えてく 弾けたリズム 今年のあの夏の境目」
「夏の境目」という表現に心惹かれるものの夏が舞台とは言い切れないのでカウントせず。夏に何かが起こる、何かがあった、そんなことを想像させる。


・恋のスーパーボール
「夜中に腕が夏の匂い」
「桃色の汗は夏の匂い」
冬の寒さに桃色の汗をって言ってたのに…! 発売時期は春の終わりから初夏の始めの五月だが、少し早めの夏の曲。日焼け止め特有の匂いがaikoの中では夏と結びつくらしい。ちなみにここでも夏の表現の一つに「日射し」が出てくる(二番Bメロ)

・ホーム
「桜も夏もひつじ雲も雪の朝も」
四季の描写としての夏なのでカウントせず。「夏」だけなのでもっと頑張れよという感じだが、aikoの二番の歌詞は曲が決まってから作られるのでメロディの都合上しょうがないことだったりする。こちら参照。

・ぬけがら
「ぬけがらみたいな夏の日」
一番が夏のことで二番が冬のことを歌っている。ということで全編夏ではないが失恋直後の夏におけるあたしが描かれる一番、ということで一応カウント。雲リンのタイトルを思わせる「白い雲」が登場する辺りにやはり夏を感じる。「ぬけがら」は蝉の抜け殻だったはず。

・冷たい嘘
「目をつぶって潜る夏の水に流してしまおうか」
aikoは潜水が好き(豆知識)表現に夏が用いられているということでカウント対象外。


・夢見る隙間
「たまにやってくる春が たまにやってくる夏が」
心象風景の比喩としての夏でサビのフレーズだけどカウント外。

・信号
「ベランダで夏が踊る」
ぬけがらと逆で一番が冬、二番が夏。ぬけがらほど夏を舞台にしていなかったのでカウント外ではあるが、ここでも「陽射し」が使われている(陽射しで少し灼けた髪を結んだ)


・夏バテ
「耳の奥に残ったまま 出てこないプールの水」
「効きの悪いクーラーと 湿っぽいあたしが揺れている」
二番には「季節は秋桜 雪のマフラー」とあるので全編が夏というわけではないがタイトルからして夏。クーラー、プールと夏の季語が盛り込まれている。曲の雰囲気も夏バテに相応しく重め。

・微熱
「あなたは夏の幻 あたしは羽の折れた鳥」
恋人を夏の幻と表現するセンスが最高に好き。夏バテとはまた違った毛色で夏を表現している一曲。

 以上、おおまかに見ていった。なお今回インディーズ曲は対象外としているが、海が登場する「HOW TO LOVE」は夏曲とカウントしてもいいかも知れない。

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